リスフラン関節症は、足の甲の中央付近にある「リスフラン関節」に炎症や変形が生じ、慢性的な痛みや腫れを引き起こす状態です。
リスフラン関節とは、5本の中足骨(足指につながる骨)と、内側楔状骨・中間楔状骨・外側楔状骨・立方骨といった足根骨をつなぐ関節群の総称で、足のアーチ構造を支える要となる部位です。
可動域は小さいものの、歩行時の衝撃を吸収し、体重を効率よく地面に伝える重要な役割を担っています。
なお、似た名称の「リスフラン関節損傷(靱帯損傷)」は、スポーツや事故などによる急な外力でリスフラン関節の靱帯が断裂・損傷する急性のケガを指し、リスフラン関節症とは区別されます。
リスフラン関節症は、こうした靱帯損傷の後遺症や、外反母趾・扁平足などによる負荷の偏りが積み重なった結果として、関節が変形性関節症の状態に至ったものを指すことが一般的です。
両者を混同すると適切な治療の選択が遅れることがあるため、注意が必要です。
リスフラン関節症の主な症状
足の甲の痛み
もっとも代表的な症状は、足の甲(特に人差し指の骨につながる第2中足骨と楔状骨の間)の痛みです。
初期には体重をかけたときや歩行時にだけ痛む程度ですが、進行すると安静時にも鈍い痛みが残るようになります。
特につま先で地面を蹴り出す動作(踏み返し)で痛みが強くなる傾向があります。
足の甲の腫れ・熱感
炎症が起こることで、足の甲が腫れぼったくなったり、触ると熱を持っているように感じたりすることがあります。
靴がきつく感じる、甲の部分だけ靴擦れしやすくなる、といった変化で気づく方も少なくありません。
骨の隆起(骨棘)
症状が長引くと、関節の変形に伴って骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげ状の突起が形成されることがあります。
これが皮膚のすぐ下で触れる硬い隆起として現れ、靴に当たって痛む原因にもなります。
しびれや放散痛
骨棘や関節の変形によって周囲の神経が刺激されると、足の甲から指先にかけてしびれるような感覚や、痛みが広がるような放散痛を感じることがあります。
歩行時の不安定感
リスフラン関節はアーチ構造を支える土台であるため、機能が低下すると足元がぐらつくような不安定感や、地面を強く蹴り出せない感覚が生じることがあります。
長期間放置すると、足の衝撃吸収能が落ち、疲れやすさや他の部位の痛みにつながることもあります。
原因
リスフラン関節症の原因は、大きく分けて次の2つに分類されます。
- 外傷性:スポーツや事故によるリスフラン関節の靱帯損傷や骨折・脱臼が治りきらず、関節の不安定性や軟骨のすり減りが進行して発症するケース。
- 非外傷性(変形性):明らかなケガの記憶がなく、外反母趾や扁平足など足の構造的な問題によって特定の関節に負荷が集中し続けた結果として発症するケース。
特に女性に多い外反母趾は代表的な誘因のひとつとされています。
本来、歩行時には親指(母趾)で地面をしっかり蹴り出しますが、外反母趾があると母趾で踏ん張れず、その分の負荷が隣接する第2中足骨のリスフラン関節に集中しやすくなります。
先の細い靴やハイヒールの多用、加齢に伴う足のアーチの低下なども背景要因として挙げられます。
診断方法
診断ではまず問診と触診で痛みの部位や誘発動作を確認したうえで、レントゲン検査を行います。
リスフラン関節は骨が重なって写りやすいため、通常は角度を変えて複数方向から撮影します。
関節の隙間の狭小化や骨棘の有無、骨のズレ(離開)などを確認し、必要に応じてCTやMRIで靱帯や軟骨の状態をより詳しく調べることもあります。
治療法
保存療法
多くの場合、まずは保存療法から開始します。
- インソール(足底挿板):足のアーチ構造を補正し、リスフラン関節にかかる負担を分散させます。
- テーピング・装具:関節の動きを制限し、炎症の悪化を防ぎます。
- 薬物療法・注射:消炎鎮痛薬の内服や、関節内へのステロイド注射などで痛みと炎症を抑えます。
- 運動療法・リハビリ:足関節周囲の筋力強化や柔軟性の改善を図り、足への負担を減らします。
手術療法
骨棘が大きく保存療法で改善しない場合や、関節の不安定性が強く残っている場合には手術が検討されます。
骨棘を切除する手術のほか、靱帯の再建術、関節の動きが少ないリスフラン関節の特性を生かした関節固定術などが行われることがあります。
手術後は、踏み返しができるようになるまで2か月ほど、軽い運動ができるようになるまで3か月ほどのリハビリ期間が目安とされています。
なお、リスフラン関節症は自然治癒が期待しにくい疾患とされており、痛みを我慢して放置すると変形が進行しやすいため、症状に気づいた早い段階で整形外科(できれば足の外科を専門とする医療機関)を受診することが勧められます。
セルフケアと予防のポイント
- 靴選びを見直す:先端に余裕があり、足のアーチをしっかり支えるクッション性のある靴を選ぶ。
ハイヒールや先の細い靴の連用は避ける。
- インソールを活用する:市販品でも足のアーチをサポートするタイプを選ぶと負担軽減に役立つ。
- 外反母趾のケアを並行する:外反母趾用のストレッチや装具で母趾への荷重を取り戻すことが、リスフラン関節への負担軽減につながる。
- 痛みがあるときは無理をしない:違和感の段階で運動量を調整し、悪化を防ぐ。
- 違和感が続く場合は早めに受診する:「ただの捻挫」と自己判断せず、痛みが長引く場合は画像検査を受ける。
よくある質問(FAQ)
Q. リスフラン関節症とリスフラン関節損傷はどう違いますか?
A. リスフラン関節損傷は靱帯が断裂・損傷する急性のケガ、リスフラン関節症はその後遺症や慢性的な負荷の蓄積によって関節が変形性関節症の状態になったものを指します。
Q. 自然に治りますか?
A. 自然治癒は期待しにくいとされ、放置すると骨棘の形成など変形が進行する可能性があります。
早期の受診・検査が推奨されます。
Q. どの診療科を受診すればよいですか?
A. 整形外科、特に足の外科(足病外科)を専門とする医療機関の受診が望ましいとされています。
まとめ
リスフラン関節症は、足の甲にあるリスフラン関節の炎症や変形によって、痛み・腫れ・骨の隆起・しびれ・歩行時の不安定感などを引き起こす疾患です。
外反母趾や過去の靱帯損傷が主な誘因となり、放置すると症状が進行しやすいため、足の甲の痛みが続く場合は自己判断せず、早めに整形外科を受診して適切な検査・治療を受けることが大切です。