モートン病は、足の中指と薬指の間、または親指寄りの指間にしびれや鋭い痛みを感じる神経障害の一種です。
特にランナーに多く、長距離を走ったり、硬い路面での練習を重ねたりすることで悪化することがあります。
「ランニングすると足先がジンジンして思うように走れない」
「しばらくすると痛みで止まらざるをえない」
という悩みは多くのランナーが抱えています。
このページでは、モートン病でランニングが難しいと感じている方に向けて、痛みを軽減する方法を詳しく解説します。
モートン病が起こるメカニズムとランニングの関係
モートン病は、足の中足骨頭(指の付け根にある骨)と中足靭帯の間を通る神経が圧迫・摩擦され、炎症や肥厚を起こすことで生じます。
これが痛みやしびれ、灼熱感につながります。
ランニングでは、特に以下のような走り方・フォームが原因になりやすいです。
- 足の前方(中足骨頭部)で強く地面を叩くように着地している
- 上半身の重心が前に崩れ、つま先側に荷重が偏っている
- 疲れてくると足の指先で蹴り出す動きが強くなる
- クッション性の少ないシューズや、幅が狭いシューズを使用している
このようなフォームは、足裏の特定部分(特に中指・薬指の付け根)に過度な負荷をかけ、神経の圧迫を悪化させます。
そのため、鍼灸治療やマッサージで一時的に血流を良くしたり痛みを和らげたりしても、根本的な原因である着地ポイントや体重のかけ方が変わらなければ、症状が再発しやすいのです。
痛みを軽減する基本の考え方
モートン病の痛みを軽減しながらランニングを続けるためには、以下の3つの柱が重要です。
- 着地ポイントと重心の改善(根本原因の是正)
- シューズ・インソール環境の見直し(足への負担分散)
- 練習量・環境の調整(炎症の鎮静)
1. 着地ポイントと重心の改善
最も重要なのがここです。
モートン病の原因は、痛む部分で地面を打ち付けるような走り方・歩き方です。
したがって、着地ポイントと重心の位置を変えることが痛み軽減の鍵になります。
かかと寄りに着地する
つま先着地(フォアフット)や中足骨頭着地(ミッドフット)は、モートン病のリスクを高めます。
かかと寄り(ヒールストライク)を意識し、着地時には足裏全体にじんわり体重が乗る感覚を持つことが大切です。
重心をやや後方に置く
走っているときに上半身が前傾しすぎると、自然に前足部への荷重が強くなります。
肩から腰、膝までを一直線に保ち、骨盤を立てる意識で走ると、重心がやや後ろに残り、つま先に荷重がかかりにくくなります。
蹴り出しを強調しない
「地面を強く蹴る」よりも、「足を後ろに運ぶ」意識に切り替えます。
大きなストライドよりもピッチを上げ、足を軽く回転させるイメージで走ると前足部への衝撃が減ります。
これらのフォーム改善は、最初は意識しないと難しいですが、数週間~数か月の練習で体が慣れてきます。
フォーム改善が進むと、走り終えた後の足先の痛みやしびれが徐々に減っていくのを実感できることが多いです。
2. シューズ・インソール環境の見直し
フォームと同時に、シューズやインソールも重要です。
- つま先に余裕があるシューズを選ぶ(横幅・甲の高さが合うもの)
- クッション性が高いソールのランニングシューズを使う
- 必要に応じて中足骨パッド(メタタルサルパッド)を装着し、神経への圧迫を和らげる
市販のインソールやパッドで足裏の荷重分散を図ることは、痛み軽減に効果があります。
ただし、これもフォーム改善と合わせて行うことが大切です。
3. 練習量・環境の調整
症状が強い時期は、走行距離やスピードを一時的に落とすことも必要です。
- 距離を半分に減らす、休息日を増やすなどして炎症を鎮める
- アスファルトよりも芝生やトラックなど柔らかい路面を選ぶ
- ウォーキングやクロストレーニング(水泳・バイクなど)で心肺機能を維持する
痛みが強い状態で無理に走り続けると、神経の炎症が慢性化し、治りが遅くなります。
練習量の調整は一時的な後退ではなく、回復への近道です。
鍼灸・テーピング・マッサージについて
鍼灸治療やテーピング療法、マッサージなどは、血流促進や一時的な痛みの緩和に役立つことがあります。
しかし、モートン病の根本原因は「痛む部分で地面を打ち付けるような走り方・歩き方」にあるため、これらの対症療法だけでは解決しません。
例えば、鍼灸で痛みが和らいでも、走り方が同じであれば再び症状は現れます。
テーピングで足指を広げても、着地ポイントが変わらなければ効果は限定的です。
マッサージで筋肉がほぐれても、負荷のかかり方が変わらない限り改善は長続きしません。
したがって、鍼灸やテーピング、マッサージは補助的な手段として捉え、必ずフォーム改善やシューズ調整と組み合わせることが重要です。
実践のステップ例
痛みを軽減しながらランニングを続けたい場合、以下のようなステップがおすすめです。
- 医療機関でモートン病かどうか診断を受ける(整形外科・足の専門外来など)
- 炎症が強い場合は、まず安静・負荷軽減で鎮静化する
- 並行して、着地ポイント・重心位置の改善に取り組む
- 痛みが和らいできたら、シューズやインソールを最適化する
- 練習量を徐々に戻し、痛みの有無を確認しながら距離・強度を調整する
こうした段階的なアプローチを取ることで、モートン病の痛みをコントロールしながらランニングを継続することが可能になります。
モートン病でランニングが思うようにできない場合には、着地ポイントと重心位置の改善が不可欠
モートン病でランニングが思うようにできない最大の原因は、痛む部分に体重をかけて地面を打ち付けるような走り方・歩き方にあります。
鍼灸治療で痛み軽減のツボやテーピング療法、マッサージなどは補助的に役立ちますが、根本的な解決には着地ポイントと重心位置の改善が不可欠です。
フォーム改善、シューズ・インソール環境の見直し、練習量・環境の調整を組み合わせることで、痛みを軽減しながらランニングを続けることは十分に可能です。
焦らず段階的に取り組み、足への負荷を減らしていくことが、最終的に「また思い切り走れる」状態への近道となります。