足の指の付け根あたりに電気が走るような痛みやしびれを感じる「モートン病」。
近年、インターネットやSNSを通じて「鍼灸(はり治療)がモートン病に効くのではないか」という情報を目にする人も少なくありません。
しかし実際には、モートン病の根本的な原因に対して鍼灸治療が直接的な効果を示すという医学的エビデンスは存在していません。
ここでは、モートン病と鍼灸治療の関係、そして本当に改善を目指すために必要なことについて詳しく解説します。
モートン病とはどんな病気か
モートン病は足の指(特に中指と薬指の間)に走る神経が圧迫されることで痛みやしびれが起こる疾患です。
正式には「モートン神経腫」と呼ばれることもあり、足裏の横アーチが崩れたり、つま先側に過剰な荷重がかかる歩き方を続けることで神経にストレスがかかり、神経が肥厚してしまいます。
結果として神経が靴や骨に挟まれやすくなり、歩行時に痛みや違和感が出るのです。
このように、モートン病は単なる「炎症」や「血流不足」ではなく、足部の構造的な問題と歩き方のクセが主因で起こるものです。
そのため、症状が慢性化しやすく、放置すると歩くこと自体が困難になるケースもあります。
鍼灸治療がモートン病に対してできること・できないこと
鍼灸治療は東洋医学に基づく施術で、筋肉の緊張を和らげたり、血流改善を促したり、自律神経のバランスを整えるといった効果が期待されることがあります。
肩こりや腰痛など、筋肉や血流が関わる症状においては一定の効果が感じられる人もいます。
しかしモートン病の場合、主な原因は神経が圧迫される「構造的・力学的な問題」です。
神経そのものが肥厚していたり、足裏のアーチが崩れている場合、鍼灸で血流を良くしても根本原因は解消されません。
症状が一時的に和らぐ可能性は否定できませんが、再発や悪化を防ぐことは難しいのが現実です。
さらに、日本の医療機関や学会においても「鍼灸治療がモートン病の完治に有効」という科学的根拠は示されていません。
つまり、鍼灸治療だけでモートン病が治ると期待するのはリスクが高いといえます。
痛みの軽減や完治を目指すために必要なこと
モートン病を根本から改善するためには、神経が圧迫されないように足裏の構造や歩行習慣を見直すことが欠かせません。
具体的には以下のような取り組みが有効です。
歩行改善(ゆるかかと歩きなど)
モートン病の多くは、つま先に過剰な荷重がかかる歩き方によって悪化します。
特にハイヒールや先の細い靴を履く女性に多いのはそのためです。
最近注目されている「ゆるかかと歩き」などの歩行改善法は、体重をかかと寄りに分散させることで前足部への負担を減らし、神経の圧迫を緩和します。
正しい歩行フォームを身につけることで、痛みの軽減だけでなく再発防止にもつながります。
靴の見直し
つま先の狭い靴や、クッション性の低い靴はモートン病の症状を悪化させます。
足指が自由に動かせる広めの靴や、前足部にかかる圧を分散できる中敷き(インソール)を取り入れることが重要です。
3. 体重や姿勢の管理
体重増加や骨盤の歪みは歩き方のクセに影響し、足裏への負担を増やします。
適正体重の維持や、姿勢の改善、下半身の柔軟性向上などもモートン病の予防・改善に効果的です。
鍼灸治療を受ける前に知っておきたいこと
「鍼灸を受けて少しでも楽になりたい」と考える方もいるでしょう。
確かに鍼灸によって足部周囲の血流が改善し、筋肉の緊張が和らぐことで、一時的に痛みが軽くなる可能性はあります。
しかし、それはあくまで対症療法にすぎず、根本的な原因解決には至りません。
もし鍼灸を試す場合でも、それだけに頼るのではなく、必ず歩行改善や靴の見直しなど「原因そのものに働きかける対策」と併用することが重要です。
また、症状が強い場合は整形外科や足の専門クリニックで診断を受け、神経の状態を確認することをおすすめします。
モートン病の完治には、鍼灸治療ではなく、歩行改善が不可欠
モートン病は、神経が圧迫されることで痛みやしびれが起こる疾患であり、根本的な原因は「足裏の構造」と「歩き方」にあります。
鍼灸治療は血流改善や筋緊張の緩和といった一時的なサポートにはなり得ますが、完治を期待する治療法ではありません。
痛みの軽減や完治を本気で目指すのであれば、歩行改善(ゆるかかと歩きなど)や靴の見直し、姿勢の改善といった「根本原因へのアプローチ」が不可欠です。
鍼灸治療に興味がある場合でも、まずはこうした根本対策を優先し、必要に応じて専門医に相談することが、長い目で見て最も確実な改善への近道となります。