モートン病(Morton神経腫)は、足指の付け根(特に中指と薬指の間など)にしびれや痛みが出る疾患です。
日常生活に支障をきたすことも多く、整形外科やペインクリニックなどで「ブロック注射(神経ブロック注射)」を勧められることがあります。
モートン病に対するブロック注射とは何か、どんな薬を注射するのか、痛みや効果の持続期間、そして根本的な改善には何が必要かを詳しく解説します。
ブロック注射とはそもそもどんな注射か
ブロック注射とは、痛みを伝える神経やその周囲に、局所麻酔薬やステロイドなどを注射して、痛みの伝達を一時的に遮断・緩和する治療法です。
神経ブロック注射とも呼ばれます。
狭義には「痛みの信号が脳に届く経路をブロックする」ことを目的とした処置です。
ペインクリニック領域では腰痛・坐骨神経痛・帯状疱疹後神経痛などにも用いられます。
モートン病の場合は、足指の間にある神経(足底神経の分枝)が圧迫されて炎症や神経腫を起こしています。
そのめ、足趾間(第3・第4趾間など)に直接注射するか、足の甲側・足底側の神経走行に沿って薬剤を注入します。
これにより、痛みの伝達が一時的に遮断され、痛みが軽減する仕組みです。
どんな薬を注射するのか
モートン病のブロック注射では、以下のような薬剤が用いられることが多いです。
- 局所麻酔薬(例:リドカイン、メピバカインなど)
- 副腎皮質ステロイド薬(例:デキサメタゾン、トリアムシノロンなど)
局所麻酔薬は神経の伝達を一時的に遮断し、数時間〜数日間痛みを和らげます。
ステロイド薬は強い抗炎症作用があり、神経周囲の炎症や腫れを抑えることで、痛みの軽減が長く持続することを狙います。
これらを単独または併用して注射します。
ただし、ステロイドを繰り返し注射し過ぎると皮膚や脂肪組織の萎縮・色素沈着などの副作用が起きるリスクがあります。
注射回数や間隔は慎重に調整されます。
注射の痛みはどれくらいか
ブロック注射は、針を神経の近くに刺すため、普通の皮下・筋肉注射に比べてやや痛みを感じやすいといわれます。
特に足趾間は皮膚が薄く敏感な部位なので、刺入時や薬剤注入時にチクッとした痛みや圧迫感を感じることがあります。
しかし、処置自体は数分程度で終わることが多く、痛みに弱い人には局所麻酔クリームを併用するなどの工夫も可能です。
また、痛みが強くて歩行困難な場合は、それでも得られる痛み軽減効果のメリットが大きいと考えられるケースもあります。
効果はどれくらい続くか
ブロック注射の効果の持続時間には個人差があります。
局所麻酔薬単独であれば数時間〜数日間の痛み緩和にとどまります。
ステロイドを併用すると数週間〜数か月程度痛みが軽減することもあります。
ただし、モートン病は神経の圧迫・炎症が根本原因のため、環境が変わらなければ再び痛みが戻ることが少なくありません。
「注射してしばらく楽になったけど、また痛くなってきた」という人も多く、根本的な治療とは言いがたいのが現状です。
ブロック注射は根本的な改善になるのか?
結論から言うと、ブロック注射はモートン病の根本的な改善にはなりません。
注射はあくまで「痛みを一時的に抑える対症療法」であり、神経圧迫の原因そのものを取り除く治療ではないからです。
モートン病の根本原因
モートン病の根本原因は、多くの場合「体重のかかり方・歩行の仕方」にあります。
特に、地面を足裏の痛む部分で強く打ち付けるような歩き方で、炎症を誘発し、神経腫が形成され、歩く際に神経が圧迫されるのが痛みの原因です。
これを改善しない限り、注射で一時的に痛みが消えても、再発を繰り返すことになります。
根本的な改善には歩行改善が必要
近年、注目されているのが「歩行改善(歩き方の見直し)」です。
歩行改善は、ブロック注射のように即効性はありませんが、正しく続けることで神経への負担が減り、痛みが徐々に軽減し、再発を防ぐことが期待できます。
整形外科でのリハビリ指導や歩行指導院、専門家のサポートを受けることで、より効果的に実践できます。
モートン病に対するブロック注射は、痛みの伝達を遮断することで一時的に症状を緩和する治療法です。
局所麻酔薬やステロイド薬を神経周囲に注射し、数日〜数週間程度の痛み軽減効果が期待できますが、神経圧迫の原因を取り除く治療ではないため、根本改善にはなりません。
再発を防ぎ、根本的に症状を改善するには、地面を打ち付けるような歩き方や足裏への負担を見直し、歩行改善を行うことが不可欠です。
ブロック注射はあくまで「一時的に痛みを和らげる手段」と捉え、根本治療としては歩行改善を組み合わせることが重要といえるでしょう。