モートン病(Morton’s neuroma)は、足の中足骨(足指のつけ根部分)の間を通る神経が慢性的に圧迫され、炎症や線維化を起こすことで痛みやしびれを生じる病気です。

特に第3趾(中指)と第4趾(薬指)の間に発症することが多く、歩行や走行時に「ビリッ」と電気が走るような痛みや、足裏に小石が入っているような違和感を訴える方が多いのが特徴です。

女性に多い疾患として知られてきましたが、近年はランニングやマラソン愛好者の間でも増加が指摘されています。

マラソンでモートン病が起こりやすい理由

モートン病の原因は「神経の慢性的な圧迫」です。

マラソンは長時間にわたり同じ動作を繰り返し、体重の何倍もの衝撃を足裏に与えます。

特に以下のような条件が重なると、モートン病を誘発しやすくなります。

  • 前足部での着地が強いフォーム
    フォアフット走法や、蹴り出しが強い走り方では中足骨部に強い圧力がかかり、神経の圧迫リスクが高まります。
  • クッション性やフィット感が不十分なシューズ
    ソールが薄い・硬い・幅が狭いシューズは中足骨部の負担を増大させます。
  • 長距離・高頻度の練習
    疲労が蓄積し、足裏の横アーチ(中足骨アーチ)が潰れやすくなることで、神経の通り道が狭くなります。
  • 外反母趾や開帳足などの足の変形
    元々アーチが崩れている場合、モートン病の好発環境が整ってしまいます。

つまり、マラソンそのものが直接の原因ではありませんが、「長時間の反復負荷+足裏のアーチ崩れ+不適切なフォームや靴」という条件が揃うと、モートン病を発症しやすくなるのです。

モートン病で足が痛くて練習ができないときの考え方

モートン病が疑われるとき、最も大切なのは「痛みがある状態で無理に走らないこと」です。

神経が炎症を起こしている段階で負荷をかけ続けると、炎症が慢性化し、線維化が進んで治りにくくなる可能性があります。

以下の手順で対処することが勧められます。

1. まずは整形外科(特に足専門外来)で診断を受ける

神経腫の有無、骨や関節の変形の有無、似た症状を示す他の疾患(疲労骨折、関節炎など)との鑑別が必要です。

診察やエコー、MRIなどで確認できます。

2. 痛みが強い時期は練習を中止・減量する

「走れる程度だから大丈夫」と思って走り続けると悪化するケースが多く見られます。

神経の炎症が強い場合は、まず負荷を抜いて炎症を落ち着かせることが優先です。

ウォーキングや水泳、自転車など、前足部に負担が少ないクロストレーニングに切り替える方法もあります。

3. シューズ・インソールを見直す

幅が狭くつま先が細いシューズは避け、前足部にゆとりがありクッション性の高いシューズを選びます。

市販のインソールやオーダーメイドの矯正インソールで中足骨部をサポートすることで、神経への圧迫を減らせる場合があります。

4. 足裏アーチ・歩行フォームの改善

モートン病は「横アーチが潰れた足」で起こりやすいため、歩行・走行フォームの改善が重要です。

最近は「ゆるかかと歩き」や「重心移動の最適化」など、足裏のアーチを活かした歩行改善法が注目されています。

走り方でも、過剰な前足部着地や蹴り出しを避け、ミッドフット〜軽いかかと着地に近づけることで、中足骨部のストレスを減らせます。

5. 一時的な保存療法

整形外科では消炎鎮痛薬やステロイド入りのブロック注射などで痛みを一時的に抑えることがあります。

ただし、これらは根本治療ではなく「痛みのコントロール」にすぎません。

症状が軽快している間に、フォームや靴・インソールの見直しを行うことが再発防止のカギです。

完治を目指すには「負荷の見直し+フォーム改善」

多くのマラソンランナーが陥るのは、「痛みが軽くなったから元の練習に戻ってしまい、再び悪化する」というパターンです。

モートン病は痛みの部位にだけアプローチしても根治が難しく、体重移動のクセや着地・蹴り出しの使い方を修正しない限り再発しやすい病気です。

  • 練習量を段階的に増やす
  • 疲労やフォームの崩れを感じたら早めに調整する
  • 足指や足裏のストレッチは補助的に行い、主軸はフォーム改善に置く

これらを徹底することで、再発防止とランニングパフォーマンスの両方が向上します。

マラソンそのものがモートン病の直接原因ではありませんが、長距離の負荷・不適切なシューズやフォーム・足裏アーチの崩れなどが重なることで、モートン病を発症しやすくなります。

もしモートン病による痛みがある場合は、無理に練習を続けず、まず整形外科で正確な診断を受け、痛みを落ち着かせることが重要です。

そのうえで、シューズやインソールの見直し、歩行・走行フォームの改善、練習量の調整を行うことが完治・再発防止への近道です。

「走ることをやめる」のではなく、「足を守るために一時的に休み、フォームを整える」ことが、長い目で見てマラソンを続けるための最良の方法になります。