モートン病(モートン神経腫)は、足の指の付け根付近で神経が圧迫されて肥厚し、痛みやしびれを生じる疾患です。

特に中指と薬指の間に多く発生し、足先に電気が走るような痛みや灼熱感、歩行時の違和感などが特徴です。

近年はテレビや雑誌、インターネットなどで「足指を広げる体操」や「足指グーパー運動」など、簡単にできるセルフケアが多数紹介されています。

しかし、モートン病が疑われる場合には、安易にこうした足指体操を行うと症状を悪化させる危険性があります。

モートン病の原因と病態を正しく理解する

モートン病の本質は「神経の圧迫と炎症」です。

足の指の付け根(中足骨頭部)にある神経が、靴の圧迫や足の横アーチの低下、歩行時の荷重バランスの崩れなどにより繰り返し刺激を受けることで肥厚し、痛みやしびれを引き起こします。

つまり、神経が炎症を起こしている状態であり、通常の筋肉疲労や血行不良とは性質が異なります。

一般的な足指体操は、足の筋力低下や血流不足を改善する目的で行われます。

健康な人には有効なこともありますが、モートン病のように神経がすでに過敏になっているケースでは逆効果になることが多いのです。

足指体操がモートン病に悪影響を及ぼすメカニズム

神経への圧迫・牽引が強まる

足指体操(指を広げる・曲げる・押し広げるなど)は、中足骨と中足骨の間隔を強制的に変化させます。

すると、すでに肥厚し炎症を起こしている神経が引っ張られたり圧迫されたりしやすくなり、炎症が増悪することがあります。

炎症期に刺激を加えることで回復が遅れる

腱鞘炎や神経炎と同じで、急性期に強いストレッチや負荷をかけると炎症が長引くことが知られています。

モートン病も同様に、炎症が治まりきらないうちに足指体操を続けると、いつまでも痛みが残ったり慢性化する可能性があります。

アーチ崩れの根本原因には届かない

足指体操は「足裏の筋肉を鍛える」ことを目的にしています。

ですが、モートン病の多くは上半身の重心バランスや歩行の癖など、もっと上位の原因によって横アーチが崩れて神経が圧迫されています。

局所だけの体操では原因が解消されず、むしろ神経への刺激だけが増える危険があります。

モートン病が疑われるときに優先すべき対応

専門医の診断を受ける

まずは整形外科(特に足の外科がある施設)で診断を受けることが大切です。

超音波検査やMRIなどで神経腫の有無や大きさ、炎症の程度が確認できます。

自己判断で体操を続けるのではなく、専門家の指示を仰ぎましょう。

局所の安静と圧迫の回避

炎症が強い時期は、まず患部を安静に保ち、幅の狭い靴や硬い靴底を避けるなど、物理的刺激を減らすことが最優先です。

インソールやパッドで中足骨頭部の圧迫を減らす処置が有効なこともあります。

歩行・姿勢バランスの見直し

最近注目されているのが「歩行改善」です。

足指だけでなく、骨盤や上半身の重心位置を整えることで、足裏への負担のかかり方が変わり、神経への圧迫を軽減できるとされています。

歩き方の指導や姿勢改善の専門家に相談することも有用です。

誤ったセルフケアで症状を長引かせないために

インターネットや書籍で紹介されている足指体操は、あくまで一般的な健康維持などを想定していることが多く、モートン病のように神経が炎症を起こしている状態には適していません。

とくに痛みやしびれが強い時期に無理に指を動かしたり広げたりすると、神経にさらなる負担をかけ、症状が悪化する危険性があります。

モートン病が疑われる場合には、まず正確な診断と、炎症を鎮めるための適切な保存療法(靴・インソール調整、患部の安静、必要に応じた薬物治療など)を行い、並行して全身のバランス改善や歩行指導などの根本的なアプローチを検討することが大切です。

症状が落ち着いてきた段階で、専門家の指導のもとに足指の筋力強化やリハビリを始めるのが望ましいでしょう。