モートン病(Morton病、Morton神経腫)は、足の前半分(前足部)にある神経が慢性的に圧迫されることで起こる病気です。
特に、足の中指(第3趾)と薬指(第4趾)の間にある「足底神経(足底趾神経)」が圧迫・摩擦されて肥厚し、痛みやしびれなどの症状を生じます。
日本では外反母趾ほど知名度が高くありませんが、実際にはハイヒールや細身の靴を履く方、マラソンや立ち仕事が多い方に起こりやすい疾患です。
では、具体的にどこに、どのような痛みが出るのでしょうか。
痛みの出る場所
モートン病の痛みの典型的な部位は、足の裏側の中足骨頭部(中足部の付け根)、特に第3・第4趾の間(中指と薬指の間)です。
解剖学的には「第3・第4趾間の足底神経」もしくは「第3・第4中足骨頭間神経」と呼ばれる部位です。
ただし実際の訴え方は人により異なり、以下のような範囲に痛みやしびれを感じることがあります。
- 中指と薬指の間の足裏(母指球・小指球よりやや後方)
- 中指・薬指の指先から付け根にかけてのしびれ・違和感
- 足の甲よりも足裏側で強く感じるが、甲側にも放散することがある
- まれに第2・第3趾の間(人差し指と中指の間)に症状が出るケース
つまり「足の指の付け根の裏側」に限局した痛みが中心で、その近辺にしびれや灼熱感(焼けるような感じ)が広がる、というのが典型です。
痛みの性質
モートン病の痛みの感じ方は、単なる筋肉痛や皮膚の痛みとは異なり、神経由来の特徴があります。
多くの患者さんが次のような表現をします。
- 「ピリピリ」「ビリビリ」とした電気が走るような痛み
- 「ズキッ」「チクッ」とする鋭い痛みが突然走る
- 「石が入っている」「小石を踏んでいる」ような異物感
- 足の指先がしびれて感覚が鈍くなる
- しばらく歩いていると痛みが強くなるが、靴を脱ぐと楽になる
特にハイヒールや細身の靴、硬い路面での長時間歩行・ランニングで症状が悪化しやすく、休むと軽快することが多いのも特徴です。
これは神経が中足骨頭間で圧迫されるため、歩行や立位で負荷が増すと症状が強まるためです。
痛みが広がる範囲と誤解されやすい部位
モートン病では主に第3・第4趾間が典型ですが、以下のようなパターンもあります。
- 第2・第3趾間型:人差し指と中指の間に症状が出ることがある
- 足の甲側への放散痛:神経が足裏から甲へも枝を出しているため、甲側にも「ピリピリ感」が出ることがある
- 小指側の足裏痛:実際にはモートン病でなく、他の神経障害や中足骨頭部痛であることが多い
このため、「足指の付け根が痛い=必ずモートン病」とは限らず、整形外科・足の専門外来での鑑別が重要です。
中足骨骨頭部痛、足底腱膜炎、疲労骨折、滑液包炎なども似た部位に痛みを起こします。
どんなときに痛むか
- 歩き始めてから数分〜数十分で痛みが強まる
- 硬い路面やヒール靴・幅の狭い靴を履くと増悪
- 指先で体重を支える動作(つま先立ち、ジャンプなど)で悪化
- 指先を開いてマッサージすると一時的に楽になることがある
これらはすべて、神経が狭い空間で圧迫・摩擦されることが原因です。
痛みのメカニズム
足の前足部には5本の中足骨が並び、その間を神経や血管が通っています。
特に第3・第4中足骨間は神経が分岐・合流する特殊な部位で、靴や歩き方による負担が集中しやすいといわれます。
長期間の圧迫や摩擦で神経の周囲に「神経腫様の肥厚」ができると、わずかな刺激でも痛み・しびれが生じやすくなります。
モートン病の痛みが発生する場所
- 痛みの典型部位:中指(第3趾)と薬指(第4趾)の間の足裏(中足骨頭部付近)
- 痛みの性質:ピリピリ、ビリビリ、ズキッ、石を踏んでいるような違和感、灼熱感、しびれ
- 悪化する条件:ハイヒール、細い靴、長時間歩行、立位、硬い路面、ジャンプ動作
- 広がり方:足指先〜足裏にかけての放散痛、まれに足の甲側にも症状が出る
このように、モートン病は「足の指の付け根の裏側」に神経由来の鋭い痛みやしびれが出る病気です。
足底腱膜炎のようにかかと中心ではなく、外反母趾のように親指の付け根中心でもなく、「中指と薬指の間の足裏」がポイントです。
痛みが持続する場合は、整形外科(特に足の外科・足病外科)を受診し、レントゲンや超音波、MRIなどで他疾患との鑑別を行うことが推奨されます。