モートン病(Morton病)は、足の中指から薬指の間(第3〜4趾間)に多く発生する「神経障害性の痛み」を特徴とする疾患です。

足の指の付け根(中足骨頭部)の間を走行する「足底神経」が、靱帯や骨の間で圧迫されることにより炎症や神経腫(モートン神経腫)を形成し、しびれ・焼けるような痛み・電気が走るような痛みなどが生じます。

ヒールやパンプスなど先の細い靴による圧迫がよく知られていますが、実際には靴だけでなく、歩き方や体の使い方など全身的な要因も大きく影響します。

なぜモートン病になるのか

足底神経への圧迫が基本メカニズム

モートン病は「足底神経が圧迫される」ことが直接の原因です。

足指の付け根には横方向に走る靱帯(深横中足靱帯)があり、ここで神経が挟まれやすくなります。

圧迫が続くと神経が腫れ、神経腫と呼ばれる状態になり、痛みやしびれを引き起こします。

靴やインソールだけでは説明できない理由

一般には「ハイヒールや幅の狭い靴」「薄いソールでの長時間歩行」「硬い地面でのスポーツ」などが原因とされますが、それだけでは発症しない人も多くいます。

つまり、外的要因に加えて、体の使い方や荷重バランスが決定的な役割を果たしているのです。

上半身の重心バランス崩れが背景にある

現代人の多くは、デスクワークやスマホ操作などで背中が丸くなり、頭部が前に出た姿勢をとりがちです。

このような姿勢は骨盤の前傾や膝の伸展制限などを引き起こし、結果として重心が前方にシフトします。

重心が前に偏ると、立っているだけで自然と前足部に体重がかかりやすくなります。

これがモートン病の大きなリスク因子です。

前足荷重+蹴り出し動作が神経を圧迫する

重心が前に移動した状態で歩くと、足の着地から蹴り出しの局面で中足骨頭部に過剰な圧力が集中します。

とくに「痛む部分(第3〜4趾間)で地面を蹴り出す」歩き方をしていると、神経が繰り返し圧迫され炎症が悪化します。

これにより、「足裏のタコ」「中足骨頭痛」「モートン病」といった症状が連鎖的に生じやすくなります。

モートン病になりやすい人の特徴

足に合わない靴を常用している人

幅が狭いパンプスやヒール、クッション性の少ない革靴など、足指の付け根を圧迫する靴を履いているとリスクが高まります。

特に女性はヒールの高さにより自然と前足荷重になりやすく、神経へのストレスが強くなります。

扁平足・開張足の人

足裏のアーチ構造が崩れて横幅が広がる「開張足」や、縦のアーチが低下する「扁平足」では、中足骨頭部に荷重が集中しやすく、モートン病の発症リスクが増します。

アーチの低下は、筋力不足や体重増加、長年の靴習慣などで起こります。

上半身の姿勢が崩れている人

猫背、反り腰、骨盤前傾、頭部前方位など、いわゆる「現代型姿勢」の人は、無意識に重心が前方に移動しやすく、結果として前足荷重となります。

このタイプは靴を変えても根本改善しにくいのが特徴です。

長時間の立ち仕事・歩行・ランニングをする人

販売職や医療職など立ち仕事が多い人、マラソンやジョギングを習慣にしている人は、中足骨頭部に繰り返しストレスがかかります。

特に前傾姿勢やフォアフット着地が癖になっている人は発症しやすいです。

足指を使わずに歩く癖がある人

現代人は足趾の筋肉が弱く、地面を足指全体で掴むように蹴り出す動作ができていないことが多いです。

その結果、中足骨頭部に点で荷重が集中し、神経が挟まれやすくなります。

モートン病予防・改善の基本

モートン病は一度発症すると長引きやすく、インソールや注射で一時的に楽になっても再発することが少なくありません。

根本的に改善するためには、足にかかる荷重を分散させること、そして蹴り出し方を変えることが重要です。

重心を後ろに戻す姿勢づくり

頭が前に出て骨盤が前傾している場合は、まず姿勢改善から取り組む必要があります。

背中を伸ばし、胸を開き、骨盤を立てる意識を持つことで、重心が自然に後方へ戻り、前足部への過剰な荷重が減少します。

踵(かかと)から着地して足指全体で蹴り出す

「かかと着地 → 足裏全体 → 足指全体で軽く蹴る」という歩行パターンが理想です。

痛む部位一点で蹴り出す癖をなくし、足指全体でやさしく推進力を得る歩き方に変えると、神経への圧迫が減少します。

足指や足裏の筋肉を使う練習

タオルギャザーや足指のグーパー運動など、足趾の筋肉を活性化させることも補助的に役立ちます。

ただし、痛みが強い場合や神経腫ができている場合には無理をせず、まず歩行の癖の改善を優先します。

靴・インソールの適切な選択

歩き方を変えてもすぐには癖が抜けないため、足幅に合った靴、クッション性のある靴底、中足骨頭部の圧迫を和らげるインソールを併用すると症状が和らぎやすくなります。

モートン病は、「靴が悪い」ではなく、前足荷重+痛む部分での蹴り出しという全身的な動作パターンがある人がなりやすい

モートン病は「足の神経が靱帯や骨に圧迫されること」で起こる疾患ですが、その背景には上半身の重心バランスの崩れ歩行時の蹴り出し癖が深く関わっています。

単に「靴が悪い」ではなく、前足荷重+痛む部分での蹴り出しという全身的な動作パターンが、神経への負荷を慢性的に高めているのです。

したがって、モートン病の根本的な改善・予防には、

  • 上半身の姿勢改善(重心を後方へ戻す)
  • 踵から足指全体にかけて荷重を分散する歩行
  • 足指の筋肉活性化
  • 足に合った靴やインソールの使用

といった多角的なアプローチが不可欠です。

こうした対策を行うことで、足裏の痛みやしびれが軽減し、再発防止にもつながります。