モートン病(Morton’s neuroma)は、足の中指と薬指の間にある神経が圧迫され、炎症や神経腫を起こすことで強い痛みやしびれを生じる疾患です。
足の指の付け根あたりに「焼けるような痛み」「電気が走るような痛み」「ビー玉を踏んでいるような違和感」が出るのが特徴です。
この病気は一般の人でも発症しますが、特に陸上競技の選手に多く見られることが知られています。
陸上競技選手にモートン病が多い理由
陸上競技選手にモートン病が多い理由です。
足への過度な負担
陸上競技、とりわけ短距離や中距離のランナーは、練習や試合で繰り返し前足部(足の指の付け根)に強い負担をかけます。
特にスパイクシューズはつま先で蹴り出す動作を強調する設計になっているため、前足部の神経に圧迫が集中しやすくなります。
また、長距離ランナーでも「蹴り出しが強いフォーム」や「足先に頼った走り」を続けると、神経の圧迫リスクが高まり、モートン病につながります。
ランニングフォームの問題
モートン病の発症に大きく関わるのがランニングフォームです。
- 地面を強く蹴り出す走り方
- 指の付け根で着地してしまう走り方
- 重心が前足部に乗りすぎる走り方
これらのフォームは足の神経を圧迫し続ける原因になります。
特に「痛む部分で蹴り出すフォーム」が続くと、炎症や神経腫の発生を加速させてしまいます。
陸上競技用シューズの影響
陸上用スパイクは軽量化されており、クッション性が低いのが特徴です。
そのため、前足部に加わる衝撃を吸収できず、直接的に足裏へ負担を与えやすい構造になっています。
これが、一般的なジョギングシューズやウォーキングシューズを履く人よりも、陸上選手がモートン病にかかりやすい大きな理由です。
陸上競技をしていてモートン病になったらどうすべきか?
陸上競技をしていてモートン病になったらどうすべきか?についてです。
ランニングフォームを改善する
モートン病になった競技者が最も優先すべきは、フォームの修正です。
- 「蹴り出し」で走るのではなく、「体の重心移動」で前に進むフォームへ変える
- 指先ではなく、かかとから前足部までをバランスよく使う走り方を身につける
- 足先で地面を押し込まない意識を持つ
このような改善を行うことで、足の神経にかかる圧迫を軽減し、再発を防ぐことができます。
足に合ったシューズを使う
スパイクシューズを使わざるを得ない場面はありますが、練習ではクッション性の高いシューズを使うことも重要です。
また、インソールを調整し、足指の間に余裕を持たせることで圧迫を減らせます。
一時的な保存療法
痛みが強い場合は一時的に以下の方法で症状を和らげることも有効です。
- アイスパックで冷やす
- 神経を圧迫しないよう、広めの靴を選ぶ
- テーピングで足の横アーチを補強する
ただし、これらはあくまで対症療法であり、根本改善にはなりません。
開帳足とモートン病の関係
スポーツ専門の整骨院やトレーナーなどは、「開帳足を筋力トレーニングで治せば、モートン病も治る」と言うところも多いです。
それは半分正解で、半分間違いです。
開帳足になる原因自体を改善しないと、開帳足再発→モートン病再発、に繋がります。
足底筋トレーニングの限界
モートン病に悩む人の多くが「開帳足」(横アーチが崩れて前足部が広がっている状態)を伴っています。
整骨院や治療院では、「開帳足だから足底筋を鍛えれば治る」と説明されることも多いです。
確かに、足底筋(足の裏の筋肉)を鍛えることで横アーチを支える力が多少高まる可能性はあります。
しかし、これだけでは根本的な解決には至りません。
過剰回内が問題の本質
開帳足になる原因は「足の過剰回内(オーバープロネーション)」にあります。
過剰回内とは、歩行や走行時に足が過度に内側へ倒れ込む動きのことです。
これが続くと足の横アーチが崩れ、結果的に開帳足になります。
つまり、開帳足そのものが原因ではなく、もっと上流にある「回内の崩れ」を直さなければ再発を繰り返すのです。
そのため、モートン病を本当に治したい陸上競技者は、足底筋のトレーニングだけでなく、走り方の根本修正=足の使い方や重心の乗せ方を改善することが不可欠です。
モートン病を防ぎつつ競技を続けるために
陸上競技選手にとって、練習を完全に休むことは難しいでしょう。
しかし、以下のポイントを押さえることで競技を続けながら改善していくことは可能です。
- 痛みが強い時期は無理に走らず、補強運動や水泳などで代替練習を行う
- フォーム修正の専門指導を受ける(コーチや治療家に相談する)
- インソールやシューズで前足部の負担を軽減する
- 足首や股関節の柔軟性を高め、過剰回内を防ぐ
- 再発予防のために、足先ではなく体全体の連動で走る意識を持つ
モートン病が陸上競技選手に多いのは、過度な前足部への負担と「痛む部分で蹴り出す」ランニングフォームに原因
モートン病が陸上競技選手に多いのは、過度な前足部への負担と「痛む部分で蹴り出す」ランニングフォームにあります。
もし発症したら、まずフォームを改善し、足先への負担を減らすことが重要です。
また、「開帳足が原因だから足底筋を鍛えれば治る」という説明は一面的であり、本当の原因は足の過剰回内にあります。
したがって、足底筋の強化だけでなく、根本的に回内動作をコントロールし、走り方そのものを修正することが、陸上競技者にとっての真の解決策となります。