足の親指の付け根に痛みを感じたとき、「これは何が原因なのだろう?」と不安になる方は少なくありません。
代表的な疾患には強剛母趾(きょうごうぼし)と痛風(つうふう)があります。
これらは似たような部位に痛みを生じるにもかかわらず、原因や治療法は大きく異なります。
ここでは、強剛母趾と痛風の症状の違いや見分け方、そしてどの診療科を受診すべきかまでを解説していきます。
強剛母趾とは?~母趾の関節が硬くなる疾患
強剛母趾(きょうごうぼし)とは、足の親指(母趾)の付け根にある第一中足趾節関節(だいいちちゅうそくしせつかんせつ)に生じる変形性関節症の一種です。
英語では「hallux rigidus」と呼ばれます。
主な症状
- 母趾の付け根(関節)が曲がりにくくなる(特に上に反らす動きが制限される)
- 歩行時や階段の上り下りで痛みを感じる
- 関節が腫れたり、骨の出っ張り(骨棘)が見られることがある
- 進行すると関節の動きがほとんどなくなり、硬直状態になる
原因
長年の足の親指の付け根付近に掛かった負荷によって関節の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかることで炎症が起き、やがて関節が変形・硬直していくと考えられています。
痛風とは?~尿酸の結晶が関節に炎症を起こす病気
痛風(つうふう)は、体内の尿酸(プリン体の代謝産物)が過剰になり、結晶化して関節に沈着することで激しい炎症を引き起こす病気です。
主な症状
- 足の親指の付け根(第一中足趾節関節)に突然の激しい痛みと腫れ
- 発症部位は赤く腫れて熱を持ち、少し触れるだけでも激痛
- 発作は通常1週間程度で治まるが、繰り返す傾向がある
- 関節以外にも腎臓結石や痛風腎などを合併することがある
原因
尿酸値の上昇(高尿酸血症)が引き金になります。
高プリン体の食事、アルコール、肥満、脱水、ストレスなどがリスク因子です。
強剛母趾と痛風の違いと見分け方
強剛母趾と痛風は、いずれも足の親指の付け根に症状が出るため、しばしば混同されがちです。
しかし、いくつかの観点から両者を見分けることができます。
比較項目 | 強剛母趾 | 痛風 |
---|---|---|
痛みの性質 | 動作時に痛い(慢性) | 安静時でも激痛(急性) |
発症のタイミング | 徐々に進行 | 突然発症(夜間や早朝に多い) |
腫れ・発赤 | 少ないこともある | はっきりとした腫れと赤み |
関節の可動域 | 徐々に動かなくなる | 可動域には影響しない(発作時は動かせないほど痛い) |
発作の反復性 | 一度発症すれば継続的 | 発作を繰り返す(間欠性) |
血液検査での尿酸値 | 異常なし | 高尿酸血症が多い |
X線画像 | 骨棘や関節の狭小化あり | 発作初期は異常がないこともある |
見分けのポイント
痛みの出方が最大のヒントになります。
「ある日突然激痛が走った」という場合は痛風の可能性が高いです。
一方で、「何ヶ月も前から歩くと痛い」「靴が当たって痛む」といった症状であれば、強剛母趾を疑います。
また、痛風では血液検査で尿酸値の上昇が確認できますし、強剛母趾ではレントゲンで骨の変形や骨棘(こっきょく)が写ります。
強剛母趾や痛風は何科に行けばいい?
症状のある方は、以下の診療科で診察を受けると適切な診断と治療が受けられます。
整形外科
- 強剛母趾の主な診療科
- 関節の変形や可動域制限、痛みの評価に適している
- レントゲンやMRIなどの画像検査も可能
内科(特に総合内科・腎臓内科・リウマチ科)
- 痛風や高尿酸血症の診療に適している
- 血液検査で尿酸値をチェックし、必要に応じて薬物療法
- 痛風関節炎の除外診断(関節リウマチや感染性関節炎との鑑別)も可能
皮膚科(例外的に)
- 痛風結節(皮下にできる白いしこり)などがある場合、皮膚科で気づかれることも
強剛母趾と痛風の違いは、痛みが突発的か、継続的かで見分ける
足の親指の痛みがある場合、強剛母趾と痛風は重要な鑑別対象です。
似たような場所に症状が現れますが、痛みの発生様式や発赤、腫れの程度、血液検査や画像検査の所見などから見分けることが可能です。
・強剛母趾は慢性的な関節の変形と痛みが特徴 |
・痛風は突然発症する激しい炎症と高尿酸値が特徴 |
・早めに整形外科や内科を受診し、原因に応じた適切な治療が必要 |
どちらも放置すると症状が悪化する可能性があるため、自己判断せず、早めの受診をおすすめします。