モートン病(Morton’s neuroma)は、足の中足骨頭(足指の付け根)に走る神経が圧迫されて肥厚し、痛み・しびれ・灼熱感などが出る病気です。
特に多い部位は「第3趾間(中指と薬指の間)」と「第2趾間(人差し指と中指の間)」です。
神経の分岐の形態上、この部位で神経が二股に分かれて走行し、物理的ストレスがかかりやすいためです。
そのため、モートン病が直接「親指(母趾)」に起こることは非常に稀です。
母趾間の発症は例外的であり、「親指が痛い=モートン病」とは通常考えません。
親指にモートン病と似た症状がある場合は、別の疾患を疑う必要があります。
親指が痛いときに考えられる代表的な病気・障害
外反母趾(Hallux Valgus)
親指が人差し指側に曲がり、付け根の内側が突出して炎症を起こす状態です。
靴による圧迫や横アーチ崩れ、遺伝的要因で発症しやすく、女性に多く見られます。
突出部が赤く腫れたり、靴と擦れて痛むのが特徴です。
母趾種子骨障害(種子骨炎)
親指の付け根足底側にある小さな骨「種子骨」が炎症を起こす状態です。
長時間の歩行やランニング、ハイヒールなどで負荷がかかると痛みが出ます。
押すと限局的に痛むのが特徴です。
痛風(高尿酸血症)
親指の付け根が突然赤く腫れ、激しい痛みを伴うことがあります。
血中の尿酸値が高くなることで結晶が関節内に沈着し、炎症を起こすためです。
急性・発作性の痛みで、片足だけに起こることが多いのが特徴です。
関節リウマチ・変形性関節症
親指の関節に慢性的な炎症が起こる関節リウマチや、加齢による変形性関節症でも痛みが出ます。
特に母趾MTP関節(付け根の関節)が腫れて痛む場合があります。
慢性的で左右対称性に起こることが多いですが、初期は片側だけのこともあります。
神経絞扼(母趾部の神経障害)
親指に分布する末梢神経が圧迫され、しびれやビリビリ感が出ることがあります。
靴や外傷、足の変形により起こることがあり、モートン病と似た感覚症状を出す場合があります。
腰椎や坐骨神経の問題による関連痛
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などで、腰の神経が圧迫され、親指にしびれ・痛みが出ることもあります。
親指の感覚領域は腰椎L4〜L5神経根に関連しています。
強剛母趾
足の甲側の親指の付け根辺りが痛む場合は、強剛母趾が疑われます。
モートン病と親指痛の違いを見分けるポイント
1. 痛みの部位:
モートン病は足指の「間」に出ることが多く、外反母趾や種子骨障害は「親指そのもの」や「付け根」に痛みが出る。
2. 発症の経緯:
モートン病は長時間歩行・ヒール・幅狭靴で徐々に悪化。
痛風は急に強い痛みが出る。
神経絞扼は特定の姿勢や靴でしびれが出る。
3. 見た目の変形:
外反母趾や変形性関節症では骨の突出・変形が見えることが多い。
モートン病は見た目に大きな変化は少ない。
4. 押したときの反応:
種子骨障害は足底側の一点を押すと痛みが強い。
モートン病は指間をつまむと放散痛が出る(Mulderテスト)。
モートン病は主に中指と薬指の間に起こり、親指に発症することは稀
モートン病は主に中指と薬指の間に起こり、親指に発症することは稀です。
親指が痛い場合に考えられる代表的な疾患は、外反母趾、母趾種子骨障害、痛風、関節リウマチ・変形性関節症、母趾部神経障害、腰椎由来の神経症状などです。
親指の痛みが長引く場合や、急な腫れ・強い痛みがある場合は自己判断せず、整形外科やリウマチ科で診察を受けることが大切です。
正しい知識のもとで適切に対処することで、症状の悪化を防ぎやすくなります。