モートン病(モートン神経腫)は、足の中指と薬指の間などに走る神経が圧迫されて起こる神経障害性の痛み・しびれです。
歩行や靴の圧迫によって神経が繰り返し刺激され、腫れて厚くなった神経がさらに痛みを引き起こすという悪循環に陥ります。
症状としては、足指の付け根の鋭い痛みや電気が走るような感覚、しびれ、灼熱感などが代表的です。
モートン病に対してよく使われる飲み薬・塗り薬・漢方薬の特徴や限界について詳しく解説します。
飲み薬:痛みや炎症を抑える薬の役割
モートン病の診療で最も一般的に処方されるのは、消炎鎮痛薬(NSAIDs)です。
例として、ロキソプロフェン(ロキソニン)、セレコキシブ(セレコックス)、ジクロフェナク(ボルタレン)などがあります。
これらは神経周囲に起きた炎症を鎮め、痛みを一時的に和らげます。
また、神経障害性疼痛に対しては、プレガバリン(リリカ)、デュロキセチン(サインバルタ)、タリージェなどの薬が使われることもあります。
これらは神経痛特有のビリビリ・ジンジンする痛みにある程度効果があります。
ただし、これらの飲み薬は「神経の圧迫そのもの」を取るわけではないため、あくまで痛みを一時的に緩和する目的で使われます。
長期間服用すると副作用(胃腸障害、眠気、ふらつきなど)が問題になる場合もあるため、主治医の指導のもとで短期間の使用が望ましいとされています。
塗り薬:局所的な痛みやしびれを和らげる
モートン病の痛みに対して、外用薬(塗り薬や貼り薬)が補助的に使われることもあります。
代表的なのは、NSAIDs入りの湿布(ロキソニンテープ、モーラステープなど)や塗り薬(ボルタレンゲルなど)です。
これらは足底部や中足骨頭部付近に貼る・塗ることで、局所の炎症や痛みを一時的に和らげます。
一方で、モートン病は神経そのものの障害が主体であるため、皮膚から浸透する薬の効果は限られています。
特に神経腫が大きくなっているケースでは、塗り薬・湿布のみで十分な効果を得るのは難しいのが現状です。
漢方薬:体質改善・痛みの緩和を目的に用いられることも
整形外科やペインクリニックで、補助的に漢方薬が処方されることもあります。
たとえば、神経痛やしびれに用いられる代表的な漢方としては以下のようなものがあります。
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):末梢神経障害やしびれに対してよく使われる
- 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):筋肉や神経の痙攣性の痛みに使われることがある
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血流改善や冷えの強い体質に
漢方薬は即効性があるものではなく、あくまで「体質改善」「血流改善」などを通じて痛みやしびれを和らげる補助療法です。
西洋薬のような強い鎮痛作用は期待しにくく、また個人差も大きい点に注意が必要です。
ブロック注射との比較:薬で効果が薄い場合の選択肢
飲み薬や塗り薬、漢方薬で症状が十分にコントロールできない場合、整形外科では「神経ブロック注射」が行われることがあります。
局所麻酔薬やステロイドを神経周囲に注射して炎症と痛みを鎮める方法です。
即効性があり、数週間から数か月痛みが軽減するケースもありますが、これも根本治療ではなく、あくまで一時的な症状コントロールです。
モートン病の根本的な改善には「歩行改善」が不可欠
薬や注射はあくまで「症状緩和」であって、神経の圧迫を解消するものではありません。
モートン病を根本的に改善するには、以下のようなアプローチが欠かせません。
- 足に負担をかけない靴選び(幅広・クッション性のある靴)
- インソール(中敷き)で中足骨頭部の圧迫を減らす
- ゆるかかと歩きなど、神経への負担を減らす歩行改善
特に最近では、歩き方の改善指導(フットケア外来や理学療法士による歩行指導)が有効で改善事例が増えています。
薬で症状をやり過ごしているうちに神経腫が大きくなってしまうと、最終的に手術が必要になることもありますので、早期から靴や歩行の見直しを行うことが重要です。
薬で一時的に痛みを抑えてもモートン病は治りません。必要なのは神経腫を作らない歩き方の習得
モートン病に対しては、NSAIDsなどの飲み薬、神経痛薬、外用薬、漢方薬などが「痛みやしびれの一時的な緩和」に使われます。
しかし、これらはあくまで対症療法であり、根本的な治療ではありません。
神経の圧迫を減らすためには、神経腫を作ってしまう歩き方の改善が欠かせないという点を理解しておくことが大切です。
薬で一時的に痛みを和らげても、その間にも神経腫は歩く度に肥大します。
根本的な原因にアプローチする歩行改善に取り組んで下さい。
歩き方を変えると、痛みは1ヵ月程度で解消し、神経腫は半年程度で消失します。