モートン病(Morton’s neuroma)は、足の中足骨の間、特に第3・第4趾間の神経に炎症や腫れ(神経腫)が生じることで、足先の痛み・しびれ・違和感を訴える疾患です。
一般的にモートン病は年間を通して症状が続くことがありますが、
「冬になると痛みが増す」
「寒くなるとしびれが強くなる」
と訴える人は少なくありません。
これは偶然ではなく、季節特有の複合的な要因が関係しています。
以下に詳しく解説します。
1. 冬季の血流低下と神経の過敏化
冬は気温が低下し、末梢血管(手足の血管)が収縮します。
足趾の神経や周囲組織への血流が減ると、酸素・栄養の供給が不足し、神経の再生力が低下します。
また、寒冷刺激そのものが神経を過敏にし、痛み信号が増幅されやすくなります。
特にモートン病では、すでに腫れている神経が圧迫されているため、寒さ+血流低下=炎症の慢性化・痛みの増幅が起こりやすくなります。
2. 足部の筋肉・靭帯の硬直
寒さで筋肉や靭帯は収縮・硬直しやすくなります。
足底の小さな筋群(足内在筋)や足首周囲の筋肉が硬くなると、中足骨の動きが悪くなり、神経への圧迫が強まります。
また、歩行時の衝撃吸収が減り、「地面を叩くような着地」になりがちです。
これが神経腫への刺激を増やすため、冬季は痛みが悪化することがあります。
3. 靴・防寒具の影響(圧迫・蒸れ・硬さ)
冬はブーツや厚手の靴下など、足を温めるためにボリュームのある装いになります。
その結果、靴の中で足趾の自由度が減り、前足部が強く圧迫されます。
特に女性用のファッションブーツやヒール付きブーツは、中足骨間をさらに狭くするため、モートン病の症状を悪化させやすいです。
また、靴底が硬い冬靴(防水仕様など)は衝撃を吸収しにくく、着地時の負荷が直接前足部に伝わります。
4. 運動量の低下・体重増加
冬は外出や運動の機会が減り、足底の筋肉が弱まりやすくなります。
筋力が低下すると重心がより前方にかかりやすくなり、神経圧迫が強まります。
さらに、年末年始の飲食増加で体重が増えると、前足部への負担が増して症状を悪化させることがあります。
5. 冷えによる感覚の鈍化と歩行変化
冷えで足先の感覚が鈍ると、自分では気づかないうちに歩き方が変化することがあります。
例えば、無意識に小股歩きになったり、かかとをあまり使わない歩き方になったりすると、前足部に荷重が集中し、モートン病の神経圧迫が進行することがあります。
モートン病が冬に悪化する主な理由
モートン病が冬に悪化する主な理由は、
- 末梢血流の低下による神経の過敏化・炎症持続
- 寒さで足部の筋肉・靭帯が硬直し、中足骨間圧が増える
- ブーツ・厚手靴下などによる前足部圧迫
- 運動不足・体重増加で前足部負荷が増える
- 感覚鈍化により歩行が変化し、さらに前足荷重が強まる
「冷え」や「冬用靴」は症状を助長するきっかけに過ぎず、根本原因は歩行・重心のバランスにあります。
したがって、冬場はとくに「足を温める」「靴を見直す」とともに、「かかと着地・重心後方」の歩き方を練習することが、痛みの軽減・再発予防につながります。