モートン病は、足の指の付け根付近に強い痛みやしびれを生じる疾患で、特に第3・4趾(中指と薬指)の間に多く見られます。
神経が周囲の靭帯や骨に圧迫されて炎症を起こし、神経腫と呼ばれる状態に至ることもあります。
歩くたびに鋭い痛みや灼熱感が走り、日常生活やスポーツ活動に支障を来すため、整形外科を受診する方が少なくありません。
長く治療が必要なモートン病は健康保険や医療保険の適用対象かどうかについてです。
健康保険の適用について
まず、日本の公的医療保険制度(健康保険、国民健康保険、協会けんぽなど)は、医師が医学的に必要と認めた治療行為に対して適用されます。
モートン病も例外ではなく、整形外科での診察・検査・治療は原則として健康保険の対象です。
保険が適用される主な内容
- 診察料:整形外科や神経内科での初診・再診の費用は保険でカバーされます。自己負担は通常3割(年齢や制度による違いあり)です。
- 画像検査:X線(レントゲン)、MRI、超音波検査など、医師が必要と判断した検査は保険適用です。特にMRIは医師の判断で保険診療として行われます。
- 投薬治療:鎮痛薬、消炎鎮痛剤(NSAIDs)、ビタミンB群製剤、外用薬(湿布など)は保険適用です。
- 注射療法(ブロック注射):神経ブロック注射は保険でカバーされ、ステロイドや局所麻酔薬を用いることで炎症や痛みを緩和します。
- 手術治療:保存療法で改善しない場合の神経腫切除などの外科的手術も健康保険の対象です。高額な自己負担については高額療養費制度により軽減措置があります。
補助具やインソールの扱い
モートン病の治療で用いられるインソール(足底板)については、一般的な市販の既製品は保険対象外であることが多いです。
ただし、医師が必要と判断し、義肢装具士などと連携して作製するオーダーメイドの治療用装具については、診断書などの手続きを経て療養費の一部が支給されるケースがあります。
事前に医療機関や保険者へ確認することをおすすめします。
民間の医療保険(入院・手術給付)の適用について
民間の医療保険に加入している場合、モートン病による治療が給付対象になるかどうかは契約内容に依存します。
一般的な考え方は次の通りです。
- 給付されやすいケース:神経腫切除などの手術を受けた場合は「手術給付金」の対象となることが多く、入院が必要になれば「入院給付金」の対象にもなります。
- 給付されにくいケース:通院による投薬や注射のみで治療が完結する場合、原則として給付対象外となる保険が多いです。また、市販インソール購入や自由診療(整体・自費の歩行指導等)は給付対象外です。
したがって、軽度〜中等度の保存療法段階では民間保険の給付は期待しにくく、給付対象になるのは重症化して手術や入院に至ったケースが中心となります。
完治に必要な歩行指導は保険対象になるか?
モートン病は、神経腫を切除しても根本的な原因となる「歩き方」や「体の重心の使い方」を改善しなければ再発する可能性があります。
そのため、近年では歩行改善や歩行指導が重要視されています。
しかし、残念ながら日本の公的医療保険制度では、一般的に歩行指導や姿勢改善のための指導は保険適用外とされることが多いです。
理由は主に以下のとおりです。
- 医療行為と生活指導の区別:保険診療は医学的に必要と判断された治療行為が対象であり、姿勢や歩行の改善は予防や生活指導の範疇に入るため保険外となる場合が多いです。
- 理学療法士によるリハビリの制限:病院で理学療法士が行う運動療法や歩行訓練は、診断名や発症からの日数などの条件つきで保険適用になることがありますが、長期にわたる個別の歩行指導が保険でカバーされるケースは稀です。
- 自由診療で実施される場合が多い:専門家による包括的な歩行改善プログラムや、整体・パーソナルトレーナーによる指導は自費診療扱いとなることがほとんどです。
モートン病の治療は保険の対象
以下に要点を整理します。
- モートン病の診断・治療(診察・検査・投薬・注射・手術)は健康保険で受けられます。
- 民間医療保険は、手術や入院を伴う治療であれば給付対象となる可能性が高いですが、通院のみや保存療法のみでは給付されないことが多いです。
- インソールや補助具は市販品は自費扱いが一般的で、例外的に治療用装具として一部が療養費扱いになる場合があります。
- 完治に不可欠な歩行指導・歩行改善プログラムは、原則として保険対象外であり、多くの場合は自費での受講になります。病院でのリハビリ(理学療法)の短期的な支援は保険適用の範囲に入ることがありますが、長期的・個別的な歩行改善は自由診療となることが多いです。
結論として、モートン病の診療は公的医療保険で受けられる一方、根本治療に繋がる「歩行改善・歩行指導」は現状では保険の範囲外であることが一般的です。
歩行指導を検討する場合は、事前に医療機関や保険会社へ確認し、費用や補助の有無を相談することをおすすめします。